【本記事の対象英語レベル:TOEIC730点以上;英検2級取得済みで英検準1級合格を目指しているレベル以上】
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今回は、「Holes」という児童文学作品のペーパーバックをご紹介します。
著者は Louis Sachar(ルイス・サッカー)というアメリカの児童文学作家です。
「Holes」は、アメリカ合衆国において最も権威のある児童文学賞の一つである「ニューベリー賞」を受賞(1999年)し、他にもアメリカ国内外で複数の児童文学賞を受賞したり、ノミネート作品に選出されたりした作品です。
「Holes」はペーパーバックを読める英語力があるかを試す試金石
「改訂3版 英語耳 発音ができるとリスニングができる」(松澤 喜好(著))という本の「第7章 英文読書のすすめ」の中に、「『Holes』がペーパーバックのリトマス試験紙」という項があり、そこには以下のような内容のことが書かれています。
・自分の英語力がペーパーバックを読めるレベルにあるかどうかをすぐに知る方法として、「Holes」が最後まで読めるかどうか、もし読めれば、さして苦もなく、さまざまなペーパーバックを読破していけるだろうということ。
・その根拠として、著者が昔、計600人に多読を続けてもらい、読書記録と感想を書いてもらった際に、実際に、洋書を読めるレベルかどうか決める基準になった本で、実際にこの基準は非常に有効に機能した、とのこと。
・「Holes」が読めれば、ペーパーバックを次々読んでいって構わない、もし「Holes」が難しくてまだ読むのは無理だと感じたら、「グレーデッド・リーダー (Graded Readers)」や「ラダー・シリーズ (Ladder Series)」などから読み始めることを推奨。
(*「グレーデッド・リーダー (Graded Readers)」や「ラダー・シリーズ (Ladder Series)」というのは、レベル別に語彙数や文法レベルを制限して書かれている英語学習者向けの洋書シリーズのことで、それらについては、以前のブログ記事<【洋書】ペーパーバック入門 ① ― 初級者編>の中で「リトールド版 (retold)」として説明させていただいておりますので、詳しく知りたい方は、是非そちらをご参照下さい。)
「英語耳」著者の松澤氏が書かれているとおり、「『Holes』は、洋書が読めるかどうかのリトマス試験紙になる」という点には、私も全く同感です。
ただ、「この本が最後まで読めたら、さして苦もなく、さまざまなペーパーバックを読破していけるでしょう」という同氏の見解には、正直なところ、個人的には同意しかねます。
その理由は、「Holes」が英語ネイティブの対象読者年齢:10歳 – 13歳ぐらいの児童文学作品であり、且つ、洋書としては、かなり読みやすい部類に入る本だからです。
確かに「Holes」を最後まで読める英語力があれば、洋書が読める最低限のレベルには達しているとは言えると思いますし、他の児童文学作品や、大人向けの小説でも難しい単語があまり多く使われていないものであれば、読破できると思います。
しかし、私自身が実際に今まで読んできた洋書の多くは「Holes」よりもずっと語彙レベルが高く、一文が長く、文構造も複雑なもの(特にノンフィクション作品)が多く、「Holes」を読破できても、必ずしも他の様々なペーパーバックが苦もなく読めるとは限りません。
例えば、同じ児童文学作品でも「ハリー・ポッター (Harry Potter)」シリーズなどは、「Holes」よりもずっと難易度が高いです。
(逆に、「Harry Potter」の原書を読むことに挑戦してみたものの思っていた以上に難しくて、途中で挫折してしまったという方には、「Holes」は、特にオススメしたい一冊です。)
因みに、オンライン書店の「楽天ブックス 」の商品ページでは、「Holes」は目安として「TOEICレベル 600点以上」と表記されています。
価格:1425円 |
しかし、実際のところ、TOEIC600点レベルの英語力で「Holes」を読破するのは、難しいように思います。
TOEIC 600点台でも、リスニングセクションよりもリーディングセクションのスコアの方が高い(=比較的リーディングが得意)という方であれば、読破できるかもしれない、といったレベル感です。
平易な英文と語彙で書かれているので洋書(原書)の中では比較的読みやすい作品ですが、それでも英検1級レベル以上の難単語も(それほど多くはありませんが)出てきます。
作品について
私自身は、上述の松澤氏の著書「英語耳」の中で紹介されていたことがきっかけで「Holes」を知り、その本の中で「『Holes』を最後まで読んだ人全員が「面白かった」とコメントしていて、内容も保証付き」と書かれていたことで興味を持ち、手に取りました。
実際のところ、「Holes」は、Amazon(アマゾン)の洋書カテゴリーの「Children’s Mystery, Detective, & Spy(子供向けミステリー、探偵、スパイ)」ジャンルでも売れ筋ランキングで常に上位に入っているベストセラー & ロングセラー本です。
「Holes」は、児童文学というカテゴリーの中だけにとどまらず、大人向けの小説も含めて、今までに私が読んだ洋書の中でも、最もストーリーが面白かった作品の中の1冊です。
児童文学と侮るなかれ、本当に良く練られたストーリー構成で、話が進むにつれて、物語がどんどん面白くなっていきます。
この小説を私は毎日の通勤電車の中で読んでいたのですが、話の面白さに、夢中で次々とページをめくり、電車を降りた後も暫くの間、駅のプラットフォームに突っ立ったまま読み続けるぐらいハマりました。
「Holes」が、洋書の中でも大変人気があり、ずっと売れ続けているのも納得できます。
「Holes」は、昔の話(=主人公の先祖の時代の話)と今の話が交錯しながら進んでいくストーリーがとても面白く、途中も全く退屈することなく物語が展開していき、最後には、昔と今の全ての話が繋がり、大どんでん返しが待っています。
洋書を初めて読んでみようと思っている方にとっては、自分が現在、洋書(原書)を読める英語レベルにあるかどうかを測る試金石となる一冊です。
また、既に洋書を何冊か読んでいて、面白い小説を探しているという方にも是非とも読んでみていただきたいオススメの作品です。
Holes映画・邦訳本・続編
映画
「Holes」は、ウォルト・ディズニー・ピクチャーズによって、2003年に映画化もされています。
何と本作品には、映画「エイリアン」で有名な、女優のシガニー・ウィーバーさんも出演しています。
本書を読み終えた後、この映画のDVDを英語音声・英語字幕で観ましたが、映画も原作同様に面白かったです。
穴 / HOLES [DVD]邦訳本
邦訳本も出版されているので、原書を読んでいて、話の内容の理解が難しいと感じたら、補助的に邦訳本を併用して読むのもアリだと思います。
穴 HOLES続編
「Holes」には、2冊の続編(そのうち1冊は続編というか関連本)があります。
Small Steps (Holes Series) Stanley Yelnats Survival Guide to Camp Green LakeNo penny, no paternoster.
金がないと祈りも上げられぬ(阿弥陀も銭で光る)